眠育の重要性

睡眠表記録は健康のバロメーター

日本眠育推進協議会理事長
三池輝久

「睡眠表を記録する意義」

子どもたちが心身ともに健やかに成長するためには質の良い眠りの時間が大事なことはよく知られています。子どもの眠りは、ただ眠りの時間さえ確保できていれば良いと言うものではなく、そのリズム(時間帯)が質の良い眠りに極めて重要なものです。
睡眠表を記録すると、寝ている時間と覚醒している時間のリズムが一目でわかり、眠りの質の良し悪しが直ちに判断できます。

「睡眠表記録は14日間」

睡眠と覚醒リズムを評価するとき、しばしば用いられている入眠と覚醒の時刻だけの記載では、全体の生活リズムの把握が困難です。全体の生活リズムが一望できる2週間の睡眠表記録が必要ですが、それは週末の生活リズムの評価が重要な情報であるからです。旅行など特別な週末が発生する可能性を考慮すると、少なくとも2回の週末の記録が必要となります。

「質の良い睡眠とは」

しかし、質の良い睡眠とはどのようなものでしょうか。
私たちの長い間の研究により、子どもの心と身体が健康に育つ眠りは以下のような条件があることが分かりました。これまで、約2万名の0歳から15歳前までの子どもたちの調査データより導き出されたものです。睡眠と覚醒のリズムは年とともに若干変化しますが、乳児期から小学校低学年までの夜間睡眠時間には変化がなくほぼ同じであることが分かりました。年齢と共に昼寝時間だけが減少するために、睡眠時間が短くなったように見えます。
しかし夜間睡眠時間は年齢によって変わりはないのです。

「睡眠の良し悪しの判定」

以下、乳児期から小学校低学年までの「質の良い眠り」についての条件をお示しします。

  • (1)夜の眠りは夜7時から朝7時までの間
  • (2)睡眠時間は夜中に目が覚めることなく持続して9-11時間(平均10時間程)確保できること、
  • (3)入眠時刻と起床時刻がほぼ一定で、毎日前後30分(1時間)程度のばらつきに抑えられること、

の三つが重要です。特に大事なポイントは(1)の生活時間帯です。
睡眠の良し悪しは、上記した質の良い睡眠の条件に合致していれば問題がないし、これらの条件から外れれば外れるほどよくないという事になります。

「三つの条件の背景・理由」

  • (1)は、これから長い将来関りを持つことになる学校社会生活では、朝6~7時の起床が重要かつ必須なことからきています。朝8時から始まる学校社会生活に適応するために必要な、重要で原点となる条件です。
  • (2)乳児期から小学校低学年までの子どもたちが必要とする夜間の睡眠時間は平均10時間ですが、これを「夜間基本睡眠時間」(Night-time Basic Sleep Duration)と呼びます。
  • (3)瀬川昌也、鈴木みゆき、ら、および、熊本大学発達小児科、の報告によると、平日と休日の入眠時刻、朝起床時刻の90分以上のずれは、情緒的な不安定さや自律神経症状の有意な発現の元になっていることが分かりました。

「生活リズム調整」

睡眠・覚醒リズムに問題がある時、ご家族で取り組んで頂くことができる二点について記しておきたいと思います。

1)夜泣きや夜間の頻回覚醒

乳児期早期からの夜間授乳習慣が問題になることが多いのです。
詳細は別に述べることにしますが、3か月を過ぎている乳児で夜間に夜泣き状態で覚醒した児に3回以上授乳している場合は夜間授乳を完全に辞める方法がお勧めです。夜間覚醒のたびに授乳する習慣は将来の睡眠障害をもたらしますし、脳の発達にも良い影響を与えません。夜間断乳に際しては、非常に強く泣き続けることが多く、保護者も大変ですが、強力な耳栓をしてアイマスクを付けて赤ちゃんの泣きに堪えることが必要です。普通は4~5日で赤ちゃんもぐっすり眠れるようになることが多いですが、強者もあり10~14日もかかったと言う保護者の話を聞くことがあります。

2)起床時刻が遅い

起床時刻が朝7時半を過ぎることが多い児に対して朝、7時半起床習慣(自力で起床できることが条件)では遅刻リズムを意味しますし、朝8時以降の起床時刻は不登校リズムと呼んでいます。起床時間は朝6~7時前にしておくことが学校社会生活に適応する鉄則ですし、第一歩です。朝6~7時までに10時間睡眠確保が大事ですから、入眠時間は自然と夜8~9時の間になってきます。
ご家族が全員で夜の生活習慣を早め、食事、風呂などを夜8時までに済ませてください。8時には消灯してご家族が全員で眠る態勢を10日から14日間お願いします。
この時、お子さんだけを早く寝かせようとしてもうまく行きません。ご家族が全員で同じ生活リズムをお願いします。夜9時などに何方かが帰宅されるとうまく行きませんので、そのような場合はしばらく時間をおいて帰宅して頂くか、あるいは本当に早めに帰っていただくようお願いします。

「医療への相談」

  • これら以外の睡眠問題、ご家庭の事情などでこの取り組みができない場合、あるいは取り組んだがうまく行かない場合は、専門の小児科医にご相談ください。
  • ある素質のお子さんでは、ご家族のご苦労にも反応してくれないことがあります。その場合は医療が必要になります。放置することができません。
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